ブログ紹介

フィリピン・バギオ市在住 ㈱TOYOTAのブログです。旅日記・書評・メモなどなんでも詰め込むnaotonoteの文字通りオンライン版。
現在は英語学校 PELTHで働いています。過去のフィリピン編の記事は、学校のブログに転載しています。

2010-10-30

70年来の風景(2010.09.06)

前日は遅くまで飲んでいたので、祖父に起こされて遅めの起床。ところが、朝食をとりに部屋を出ようとすると…

「わりぃ、俺風邪ひいたみたい。今日ダメだわ」

弟、まさかの風邪ダウン!

まぁ、慣れない旅と興奮で体調のペースが崩れたのかもしれません。仕方がないので、弟を部屋に残し、午前中は祖父と二人で小樽を見下ろす天狗山へ向かいました。残念ながら雨が降っていますが、空には雲にの途切れもあるので、途中で晴れることを祈りつつ出発です。駅前からバスに乗って、まずは天狗山ロープウェイ乗り場まで向かいます。

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▲小樽駅前。空は青いが、実際にはお天気雨。

すでに触れたように、小樽は祖父が幼いころに住んでいた街です。バスでの移動中、祖父は小樽の景色を見ながら僕に昔の思い出を語ります。

「昔あのへんに住んでいたんだ。ちょうど、あの路地の裏あたりに」

「あの坂はずいぶんと急勾配だろう。毎日上るのが大変だった。みんな地獄坂と呼んでいたんだ」

もう何10年も昔の話ですが、昔確かに、祖父はこの街で暮らしていたんだなぁと実感しました。

ロープウェイに乗って、山頂へ。天狗山の街に面した斜面は、冬にはスキー場として使われ、このロープウェイもスキー客を山頂へと運ぶリフトとして活用されます。もちろん、祖父が小樽に住んでいたころにはこんなものはなく、歩いて山頂までのぼり、街のふもとまで直滑降で滑って降りてきたそうです。

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徐々に高度を増していくリフトに乗りながら、

「速いやつはなぁ、山頂から…そう、あそこに見える学校のあたりかな。昔はなかったんだけれども、あのあたりまでは昔はまだスキー場になってたんだ。あのあたりまで、だいたい2分くらいですっ飛ばして滑り降りていったもんだよ。俺はそんなに速い方じゃなかったから、あそこまで滑るのに3分くらいかかったけれど」

と語る祖父。山頂の駅に着くと、その景色に感動しました。ちょうど雨も止み、雲は残っているものの青空が広がって、かなり遠くまで見渡せます。

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▲小樽の風景。昨日の夜に散歩した埠頭公園、運河沿いの町並みも見える

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▲小樽・石狩湾を背景に祖父と。

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▲西側の第2展望台から。

しばらく一緒に天狗山を散策してから、以前と比べてだいぶ足腰の弱くなった祖父をロープウェイ駅のカフェに残し、自分は一人で天狗山のトレッキングコースを歩きました。地図をぱっと見た感じ、10分くらいで一周できるかな、と思っていたら、割と本格的な登山道です。結局、1週するのに早足で30分近くかかりました。

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▲天狗山トレッキングコース

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▲雨が上がって、むしろ日差しが強くなってきました。トレッキングで汗をかいた後は、小樽を見下ろせるカフェで一服。



祖父が小樽に住んでいたのは10歳くらいまで。その後、何度か旅行で小樽には来ていたそうですが、天狗山に登る機会には恵まれず、ここに来たのは実に約70年ぶりとのこと。山頂から見る小樽の町並みは、当時と比べるとだいぶ変わっているはずですが、それでも祖父は思い出に残る景色と現在のそれとを見比べて、自分の幼いころを振り替えてっているようでした。地元の人と会うたびに、「小さいころここに住んでたんですよ。いやぁ、懐かしい」と挨拶する祖父はとても嬉しそうに話し、その顔には幼さが戻っているようにも感じられます。

「いやぁ、天狗山には何度も来ようと思ってたのに、ずっと機会に恵まれなくってね。やっと念願が果たせた。今日で…寿命が5年くらい延びたよ。」

自分はまだ20年そこらしか生きてないので、70年ぶりに見る景色、というのはその目にどう見えるのか、想像もつきません。が、祖父の満足そうな顔を見ると、ここまで一緒に来て良かったなと改めて思いました。

ロープウェイの駅では、小樽の古写真展が催されており、明治・昭和時代の小樽が白黒写真で展示されています。幸運にも、懇意になった駅の職員さんからそのコピーを譲ってもらうこともできました。天狗山から見る小樽は本当にいい景色です。まだ昼ですが、今日はもうこれだけでも満足。

惜しむらくは、小樽の夜景を天狗山から眺めることができなかったこと。この日はこのあと午後に札幌まで移動しなくてはならなかったので、残念ながら今回はお預けですが、またいつか、小樽の夜景を天狗山から望むべく、もう一度来ます。いつになるかはわかりません。ただ、70年たってようやく念願を果たした祖父を見ると、人生長いスパンで考えようって気にもなります。

中心街に戻ってから昼食をとり、宿で寝込んでいる弟を見舞ってから、自分はここで一度2人とお別れです。祖父と弟は小樽にもう一泊していきますが、自分は一足先に札幌へ向かいます。この旅のそもそもの目的でもある、友人との再会のために。





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▲駅前から港に向かって伸びる中央通。そのまま第3埠頭までつながる。見えにくいかもしれませんが、通りの奥にある白い構造物がフェリーです。駅とフェリーがダイレクトにつながっているなんて、洒落た都市設計です。



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