ブログ紹介

フィリピン・バギオ市在住 ㈱TOYOTAのブログです。旅日記・書評・メモなどなんでも詰め込むnaotonoteの文字通りオンライン版。
現在は英語学校 PELTHで働いています。過去のフィリピン編の記事は、学校のブログに転載しています。

2011-08-19

『冒険投資家ジム・ロジャーズ 世界バイク紀行』

友人から、ジム・ロジャーズなる人物について教えてもらいました。僕はビジネスにはあまり興味がないのですが、投資の世界では有名な人物とのこと。なんか聞いたことある名前だなー、って気はしてたんですが、ジョージ・ソロスとクォンタム・ファンドを立ち上げた人物、と聞いて「あー」て思い出しました。

なぜ興味をもったかというと、友人によれば「彼は投資家というかむしろ旅人なんだ」ということ。「彼は世界的に有名な投資家だけど、自分で世界を旅して、そこで自分が見たものを、投資の参考にしている。だから、他人とは違った視点で投資ができるんだ」と。

■ビジネス本×旅行本

自分はどんなに間違っても投資に手をだすことはないと思いますが、「旅」というテーマには反応してしまいました。それでもって、さっそく買ってみたのがこの本。



これは面白い。世の中には「旅行記」があふれていますが、『冒険投資家』は僕がはじめて読むタイプの旅行記です。というのも、この本はやはり、投資家としての側面をもつロジャーズが書いているだけに、世界各地の現状分析が非常にクリアに記されているのです。彼の旅は冷戦構造崩壊前のものですが、「20年以上も前に、いまの国際情勢を予言してやがるー!」と驚くことも多い。例えば、

地球規模の戦いはまだ終わっていない。次の戦いは共産主義と資本主義ではないかもしれない。将来の対決はイスラム教対キリスト教である可能性は充分にある。あらゆるイスラム文化が復活しつつある。それは彼らがイスラム風になりたいからというわけではなく、イスラム教徒を増やすための伝達手段が必要だからだ。人間は裕福だとあまり争わない。イスラムは彼らにとって自らの繁栄とアイデンティティのための唯一のツールなのである。それこそがイスラムの人たちが欲しているものというわけだ。(p67)

まさに、ポスト冷戦、パクス・アメリカーナ後の世界そのものです。話はちょっとそれますが、このキリスト教VSイスラム教の宗教戦争の構図は、フィリピンにも当てはまります。イスラム原理主義のテロリストグループ「アブ・サヤフAb Sayaf」によるミンダナオ島 分離独立闘争がそれで、フィリピン人の中には、「我々はムスリムによって侵略されている」とはっきり断言する人もいました。

ともあれ。ロジャーズの本からは、「世界を理解してやろう」という意思が、強く感じられます。もちろん(僕はあまり興味がないので読み飛ばしましたが)、投資に関するテクニックに関する記述も多数。そういう意味では、旅行本というよりはビジネス本なのかもしれません(そもそも、出版レーベルは日経ビジネス人文庫)。どちらにせよ、非常に知的好奇心を刺激してくれる本です。ビジネス・国際情勢のレポートとしてだけではなく、もちろん、旅行記としても面白い。

旅とは目的地へ到達するための手段だけれど、バイクで行く旅はそれ自体が目的なのだ。行ったことのない場所を駆け、新しい人に邂逅し、冒険し、経験する。これほど素敵なことはない。(p15) 
日課の10キロのジョギングは欠かさず、私が二人分の洗濯をしたが、これは心を落ち着かせるのに役立った。この時点では私が旅を支配しているのではなく、旅が私を支配していた。(p47)

このあたりは、旅人なら絶対に共感しうる文章だと思います。

■旅にはテーマが必要だ

この本を読んで確信しましたけれども、やっぱり旅にはテーマが必要ですね。ロジャーズにとって、それは「投資」であって、その「投資」という窓を通じて、世界を見る。それが彼の旅のスタイルです。バックパッカーにはいろんな人がいます。いろんな人がいてそれぞれ面白いのですけれども、僕が話をしていて面白いな、と思うのは、やっぱり旅のテーマというか、目的、あるいは得意分野を持っている人です。

例えば、欧州放浪旅行で出会ったコックさん。フランス各地を食べ歩きしながら「料理」の勉強をしていました。「建築」をテーマに、各地の有名な建造物を見ながら放浪している学生もいた。バギオの英語学校でも、フィリピンの農業を研究しにきている子がいて、話を聞いていてとても面白かった。テーマをもって旅している人は、それを入り口にその国の文化・風土を理解できるので、話を聞いていて、とても面白い。ちなみに、僕にとってのテーマはその国の「歴史」でしょうか。

もちろん、人間関係だとかゴシップだとか、そういうちょっと「下世話な」話をするのも楽しいのですが、それだけでは、日本の居酒屋で話していても、何の変わりもない。せっかく海外にきているのだから、その国のことを話題にしなければ、僕はもったいないと思う。

そういう意味で、僕は、ロジャーズの旅の仕方は、全ての旅行者、あるいは全ての若者にとって、ロールモデルになると思います。この本を読んでいて、彼は知的好奇心の強い人間なんだな、って思う箇所がいくつかありました。たとえば

こういう旅ではたくさんの食料を持ち運ぶのは不可能だったし、レストランのメニューは当然トルコ語だった。こんな場合いつもするように、私たちは厨房に入っていいかと、英単語の羅列と身振り手振りを組み合わせて尋ねた。彼らは決まってイエスと言った。(p49)

とか。要は、疑問に思ったら、聞いてみる。行きたいと思った場所は、訪ねてみる。そんなロジャーズの旅のスタイル、僕は好きだなってことです。

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