ブログ紹介

フィリピン・バギオ市在住 ㈱TOYOTAのブログです。旅日記・書評・メモなどなんでも詰め込むnaotonoteの文字通りオンライン版。
現在は英語学校 PELTHで働いています。過去のフィリピン編の記事は、学校のブログに転載しています。

2012-06-09

「息切れクールジャパン」Newsweek 6・13

Newsweekで気になる特集を組んでいたので、思わず買ってしまいました。


カバーストーリーのタイトルは「息切れクールジャパン
以下3本の記事が載ってます。


  • クール・ジャパンのお寒い現実(ダン・グルネバウム)
  • 日本のドラマのパクリ文化を憂う(山田敏弘)
  • カワイイだけは生き残れない(シャロン・ラーナー)

■クールジャパンはなぜ失敗したのか?

まずは、日本の「クールジャパン戦略」への強烈なダメ出しから。
 国際的な脚光を浴びて有頂天になった政府と学会、メディア、関連企業は、クール・ジャパンを世界に売り込むキャンペーンに乗り出した。日本経済が停滞するなか、新しい市場を獲得し、文化大国の座を築くチャンスだと期待された。(略)
 それで、文化超大国を目指す日本の夢は実を結んだのか? ひとことで言えば、クール・ジャパンは精彩を欠いている。日本企業は、マンガやアニメを安定した収入源にできていない。経済産業省の12年度版の報告書によると、日本のクール・ジャパン関連のコンテンツのうち輸入されている割合は5%止まり。アメリカのクリエーティブ産業は、コンテンツの17.8%を輸出している。(「クール・ジャパンのお寒い現実」p51)
 日本のコンテンツ産業を悩ませている問題は、製造業が抱えている問題と似ている。「ガラパゴス化」は、エレクトロニクス産業だけの現象ではない。(同、p52)
 マーケティング戦略として見ても、クール・ジャパンは問題だ。「創造性はマーケティングによっては生まれない」と、明治大学の「クールジャパン・プログラム」の責任者を務める北脇学講師は言う。「経産省は大企業にキャンペーンを依頼した。これで、クール・ジャパンは企業の金儲けの手段になってしまった そもそも外国人がそう呼ぶならまだしも、日本人自身が自国を「クール(かっこいい)」と呼ぶのはかなり情けない。(同、p53) 
Tony Blair
卒論のテーマに選んだ、個人的
には思い入れのある英国首相
クール・ジャパンと聞いて思い出すのが、イギリスのブレア政権が進めた「クール・ブリタニア政策」です。誰がスローガンの言いだしっぺなのかは知りませんが、思いっきりイギリスのパクりですね。

トニー・ブレアは自身がロック好きという性格もあり、当時流行っていたBritpopや英国発のアートを世界ブランドとして発信しようと試みました。Cool Britannia とは、Rule, Britannia(『英国よ、世界を治めよ』)という愛国歌のタイトルとかけた標語です。

しかし、その結果は成功とはいい難いものでした。一時的にイギリス国民、そして世界の注目を浴びたのも事実ですが、ブレア政権が発足した翌年のエコノミスト紙には「すでに多くの人がうんざりし始めた」と酷評され、「クール・ブリタニア」は完全に死語の状態。

たぶん、世界からみたら「クール・ジャパン」もこれに近いのかもしれない。5%しか輸入されていない文化の、どこがクールなの? と。

では、なんでこんなことになってしまうのか。以下の指摘が示唆に富んでます。
「特定の何かがクールだというなら分かる」と、米誌ビルボードの元アジア支局長スティーブ・マクルーアは言う。「だが、ある文化現象に国名を付けて売り込むのは危険だ。ポップカルチャーには流行があるから、クールなものがクールでなくなる」(同、p53)
スウェーデン人イサック。
この枕を獲得するために
クレーンゲームで2000円も投入(笑)
そう、文化には流行り廃りがあるのです。一時的に世界が「日本文化っていい!」って騒いでも、それが永久のものだと思って浮かれてはいけない。もちろん、コアな日本文化のファンはいます。僕にも下手したら日本人のオタクよりもアニメに詳しいスウェーデン人の友達がいます。

しかし、ブームはあくまで一時的なもの。その一時的なブームと国家のイメージを同化させてしまうと、ブームが収束して世界が醒めてしまったときに、国家イメージも一緒に落ちてしまうぞ、ということです。


■真のソフトパワーとは何か?

国家にはハードパワーとソフトパワーがあります。前者が軍事力や経済力、つまり目に見えたり、数字で捕らえることのできる指標なのに対して、後者の定義は難しい。一般的には文化の力と捕らえることが多いので、「クールなジャパニーズカルチャーを世界に広めることは、日本のソフトパワーの拡充につながる」と勘違いしてしまいがちです。しかし、
(略)…ナイの提唱したソフトパワー(空母や市場の力を借りずに世界に与える影響力)とは、他国に好かれるためのものではない。リスペクトされるかどうかの問題だ。世界を楽しませるエンターテイナーの力ではなく、世界のロールモデル(模範)になり得る力である。
 その種のソフトパワーとは、例えば東日本大震災の被災者の冷静さを失わない姿であり、核心と流動性を奨励するビジネス文化であり、他国から移民を受け入れる社会環境だ。(「カワイイだけじゃ生き残れない」p59)
そうなんです。真のソフトパワーとは、「リスペクトされるか」なんです。

なぜバギオで今、あれだけ韓国人が嫌われているのか? 同じく60年前に日本人が失敗したのは何故か? どちらも、現地の人からリスペクトされなかったからです。

僕は日本人が日本人らしく普通に生きていれば、世界からのリスペクトは勝手に集まると思っています。それは例えば、他人を思いやる文化だったり、異文化や宗教に対する包摂的な姿勢だったり、時間に正確な民族性です。

実際に外国人に日本人の印象を聞くと、"sophisticated 洗練された"、"disciplined よくしつけられた" "polite 礼儀正しい"って言葉をよく聞きます。

下手な文化戦略にまぎらわされることはない。日本人は日本人らしく、昔からある日本文化を大切にしていれば、ソフトパワーはあとから勝手についてくる。僕はそう思います。









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1 件のコメント:

  1. なるほど、確かにリスペクトされるかが大事ですよね。

    ちなみに私は外国人とSNSでやり取りしますが、今の若者は
    ロシアが好きみたいですね。なんであんな恐ろしい国が好きなのかと
    言えば、外国人いわく「プーチン、美女、そして男らしさ」が
    ソフトパワーになっていると。ロシアはアメリカに並ぶ軍事力を
    ウクライナで行使するからハードパワーしかないと思ったのですが
    彼らからすれば「プーチンと言う白人のカリスマ政治家が美女の
    ロシア人から尊敬される男らしさを持っている」ところが惚れるのです。
    日本の安倍首相を外国人が見ても優しそうなおじさんにしか見えません。
    そして男性も女性も頼れる存在を求めます。そこでロシアが人気になるのだと。
    ただ日本人としては理解できない部分が多いですけどね。
    欧米や途上国の若者はもしかすると圧倒的な強い存在を求めている
    かもしれません。

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