ブログ紹介

フィリピン・バギオ市在住 ㈱TOYOTAのブログです。旅日記・書評・メモなどなんでも詰め込むnaotonoteの文字通りオンライン版。
現在は英語学校 PELTHで働いています。過去のフィリピン編の記事は、学校のブログに転載しています。

2008-09-04

宝塚歌劇 安蘭けい主演
『スカーレット・ピンパーネル』

今日は一日予定が空いたので、また東京宝塚劇場に並んでみました。以前、並んでもチケットが売切れてしまった経験があったので、今度こそチケット取るために、発売開始の一時間前から並びました。結果、18時開演のチケットをようやく入手。しゃーこーい!

やっとこさチケット取れた宝塚初体験。星組公演。行きましたよ!それも男1人でね!(笑) とある宝塚ファンの熱心な勧誘をうけ、観てみたくなりました。案の定、観客の95%が女性客。あとの4%は家族連れで来てるお父さん。男1人とか、自分くらいか(笑)

休幕中の女性トイレに、ディズニーランド並みの列が出来てるの見たときは、男でよかったなぁと心底思いましたが、喫煙所まで女性ばっかりなのには驚きました。女性の割合の方が多い喫煙所なんて、そうそう無いですよね。


■スカーレット・ピンパーネル

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演目は、『スカーレット・ピンパーネル』 フランス革命時代の話です。『ベルサイユのばら』で鳴らした宝塚のお家芸ですね。

フランス革命時代とはいっても、主人公はイギリス人。主人公がイギリスの反革命派(王党派)なので、革命派(ジャコバン派)はいわば敵役です。しかも華々しい宮廷と、輝かしい(初期の)革命のを描いた『べるばら』と違い、舞台は1794年という、ジャコバン独裁 ・ 恐怖政治の真っ只中。プレリアール法のもと、1ヶ月間に(パリだけで)2500人もギロチンされちゃった時期ですから、人類史上でも有数の、血なまぐさい時期です。正に暗黒時代。金正日も真っ青。

「貴族」というだけで虐殺の対象となるそんな時代、フランスから貴族の友人達を亡命・救出させる、イギリスの青年の話。このストーリー内容(http://kageki.hankyu.co.jp/scarlet_pimpernel/story.html)が、観ようと思った決め手でした。

この時代は、どうしてもヴァンデの反乱で活躍したラ・ロシュジャクランなんかに肩入れしてしまいます。そもそも自分の研究対象のひとつに、反革命運動を支援したイギリスの政治家、エドモンド・バーク(保守主義のイデオローグ)の政党論があるので、たぶん主人公の立場が反対(革命派)だったら、思想的にアレルギー拒否反応がでちゃう自分は、観てられなかっただろうと思います。

フランスの舞台女優という設定のヒロインが、革命政府の親玉・ロベスピエールに露骨に反抗してみたり、べるばらでは尊称として使われる「シトワイヤン(市民)」が、この作品では蔑称として用いられています。『ベルサイユのばら』で描かれたフランス革命のイメージとは、一線を画した話といえるでしょう。


■ちょこっと時代考証


ルイ17世の脱出
ちょっと時代考証的なことをさせてもらいますと、史実と照らし合わせてどうしてもありえないのが、ルイ・シャルル・カペー(幻のルイ17世)が、幽閉されていたタンプル塔からの脱出に成功してること。この舞台の原作が書かれたのが20世紀初頭とのことなので、ルイ17世替え玉説を反映しているのかもしれませんが。シャルルくんは確実にあの塔の中で死に絶えました。第一、ジャコバン政府がシャルルをみすみす逃がすなんて考えられません。国王処刑で一斉に諸外国からの非難をあびた革命政府にとって、王子の身柄は絶好の取引材料です。

ですが、ここでこの幼いシャルル殿下を脱出させ、あれこれ喋らせることで、彼の親であるマリー・アントワネットとルイ16世の家族愛を主人公夫妻の信頼関係に重ねるという役回りを演じさせることに成功しています。

さらに、主人公パーシーに、アントワネットの息子である彼を救出するという大義を与えることで、ある意味『べるばら』のオスカルが本来すべきだったことを、主人公がやってのけたりだとか、いい演出につながってると思います。このあたり、宝塚版の『べるばら』と『ピンパーネル』は細い糸でつながりが残っているともいえるでしょう。


ショーヴランのモデル
主人公パーシーとマルグリットはもちろん創作ですが、もしかしたら実在の人物かなぁと気になった、公安委員のショーヴラン(Chauvelin)。公安委員会のリストに名前が無いので、どうやら創作の人物のようです。

モデルは、“ロベスピエールの目”と呼ばれた、最年少ジャコバン党員のマルク・アントワーヌ・ジュリアンじゃないでしょうか?革命に命をささげ、革命と自己を同一化したジュリアンの生き方は、狂信的なショーヴランのキャラクターと重なります。ロベスピエールの側近という設定からは、まずサン・ジュストやクートンあたりが思い浮かびますが、ジュリアンはショーヴラン同様、イギリスに派遣された経験もあるので、こちらの方が有力かと。


宝塚歌劇として


史実では、上記のような血なまぐさい時代背景ではありますが、この物語は冒険活劇としての側面が強く、ストーリー・演出は明るくできてます。"宝塚的ユーモア"とでも言ったらいいのか、御婦人方が「おほほほほ」とでも言いそうな、こ洒落たセリフも多くて意外と笑えました。

青年達がミッションに燃える心地いい雄雄しさとか、ヒロインが恋人を信じきれない自分に悩む姿とかを描きつつも、最後は大団円のハッピーエンド。気持ちいいところで終わってくれたので、いい気分で観終われました。

そもそもストーリーに興味をもって見に行ったので、極論を言えば宝塚じゃなくても良かった、というのもあります。はじめは。同時期に、並ばなくても見れて、しかももっとリーズナブルな映画とかでやってたら、間違いなくそっちで済ませてたかな。

でも結果的に、宝塚版で見て大正解でした。平面の映画と違って、ホンモノの女優さんたちがあちこち動き回るし、歌うわ踊るわ、BGMは生演奏だわの、お見事な舞台演出。生演奏で、主人公のセリフに合わせて演奏するあたり、指揮者の振り方とかももっと見てみたかったと思います。


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踊りも、ラストのラインダンスと、ドラムソロのBGMでのサーベルダンスはホント格好良かった。自分は、舞台からは最も遠い2階席の最後列 (Bランク席) だったんですが、こりゃあ10000円払ってSS席で見たいって気持ちもわかるかも。

そして何より驚いたのは、宝塚の女優さんたち、顔がホントに綺麗すぎです。男役は、下手な男優より格好いい(笑)『20世紀少年』にも黒木瞳女史がでてますが、主演クラスは本当に綺麗な顔立ちです。主人公パーシー役の安蘭けいさん、歌も本当にお上手ずで、聞き惚れました。舞台歌手って設定のヒロイン役よりも上手かったんじゃないだろか。

隣に、同年代らしきおねーさんと、その母親らしきおば…もとい!マダム&マドモワゼルですね(笑) がいらしたんですが、 話してみると、とてもお上品な喋り方。観劇中も、笑うときは必ずハンカチ当てて口隠してました。宝塚初体験のところ、いろいろ親切に宝塚の基本知識とか教えてもらって、この母子にはかなり感謝しております(笑)オペラグラス貸してくださったのは本当に助かりました。

鑑賞後も、ファンクラブでもあるんですかね。劇場出口の前で大勢のファンがビシっと綺麗に整列して、女優さんが楽屋から出てくるのを待っていらっしゃる。その姿はまさに「清く、正しく、美しく」(笑)

先週あたりの 『週間ダイヤモンド』 だったかな?エンタメ業界特集で書いてたけど、宝塚って稼働率が常に100%近いらしいですね。こりゃ確かに面白いです。ハマるのも、わからなくはない。いまだに、頭からメインソングが離れません。

「せ か いーじゅうのて き を たーおしたとしてーもぉー♪」
「あなたーこーそぉー わ が や よぉー♪」

宝塚の『スカーレット・ピンパーネル』、オススメです。もっとも、チケット予約はもう満席なので、朝早くから並ぶしかないんですが…。

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