ブログ紹介

フィリピン・バギオ市在住 ㈱TOYOTAのブログです。旅日記・書評・メモなどなんでも詰め込むnaotonoteの文字通りオンライン版。
現在は英語学校 PELTHで働いています。過去のフィリピン編の記事は、学校のブログに転載しています。

2008-02-29

『フリーメイソン』

欧州放浪中、西洋史の勉強をしてるって言ったら、いろんな人に質問された西洋の秘密結社・フリーメーソン。聞かれたら、とりあえず「創価学会みたいなものじゃないですか。『創価学会』って組織があることはみんなが知ってるけど、だれが学会員なのかはわからないでしょ。」ってな感じに答えていました。

歴代アメリカ大統領がメーソンとつながっているとか、ドル紙幣にメーソンアイが印刷されているとか、陰謀論につながりやすそうなところは適当に濁していたつもりだったのですが、繰り返しているうちに自分が気になってきてしまったので、帰国したらきちんと調べてみようと思って手に取った一冊。再読。




最近の陰謀論ブームやダン・ブラウンの小説のヒットなどで、日本でも知名度が上がってきた(もはや存在が公然としすぎてなんら秘密でもない)秘密結社・フリーメーソンですが、その実態は陰謀論的アプローチが強すぎて、多くの誤解があるように感じます。少なくとも、この本で主張されるメーソン観とは一致しません。

著者によれば、その本質は、「理神論」を核とする18世紀の啓蒙結社であったようです。

本書の大部分が近代メーソンの設立期という、西洋啓蒙活動の時代とオーバーラップしており、あまりオカルティックなアプローチはしていないので、他の本と比べると説得力を感じます。キリストの教えに代わって、西洋社会に浸透した「徳」という概念。この徳の高い人間を育み、「普遍的な人類共同体」を設立することが、メーソンの目的だったようです。

著者はあとがきでこう述べています。
ふりかえって、フリーメーソンとは何かと自問してみると、それは近代という世俗化の時代に登場した一種の擬似宗教ではなかったかという気がする(P178)
「科学」「道徳」「理性」いう名の新しい宗教を広めるための、新しい「教会」となったのがフリーメーソンだったということでしょう。

陰謀論に結びつけるためのメーソン論とは明らかに一線を画していますが、そのぶん、一般の方々が知りたがる、「世界を裏から牛耳る秘密結社」的な記述は見受けられません。そういう類の本を求めてる人は、『ダ・ヴィンチ・コード』の解説本とかを読んだほうが楽しめると思います。研究者でもない限り、面白く、楽しく読める本が一番です。実は、(批判的読書を目的としないならば)自分もそういう本は好きです。

また、現代のメーソンの性格についての描写が少ないのが残念。むしろ、西洋の啓蒙思想や神秘主義を勉強する上で参考になる本かもしれません。

といわけで、おそらくフリーメイソンの「全貌」を描いた本ではないのだと思われます。著者の吉村さんは、西洋の神秘主義への興味からフリーメイソンにいきついたとのことで、そのことは本書にも色濃く反映されています。フリーメイソンの「全貌」に迫るレベルの本だと、新書じゃ無理かな?安価で説得力のある本があるなら、読んでみたいのですがどなたかご存知ないでしょうか?

あと、最近はやり(?)の「竜馬はフリーメーソンに操られてた」説も一回読んでみたくなりました。あくまで「楽しみ」のためですよ。こういうの読むと、たぶん教授に怒られる(笑)  次は「織田信長はフリーメイソンに操られていた」「聖徳太子はフリーメイソンに操られていた」説登場しないかなー。絶対面白いと思うんだけどなー。

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