塩野七生の『ローマ人の物語』シリーズです。流石に長いので、このシリーズに関しては自分の興味のある部分だけ買ってつまみ読みしてます。DVDで『ローマン・エンパイア』を見たのがきっかけで、カエサル死後のローマ史を復習したくなったので読んでみました。
主人公はオクタヴィアヌス(アウグストゥス)。彼が若かりし頃の活躍と、老いてからの苦悩のシーンを交互に展開。時代が行ったり来たりするのに加えて、誰が誰を演じているのかわかりにくいので、ローマ史の知識がない人がいきなり見ると展開を追うだけで精一杯かもしれない。老いたアウグストゥスを演じるピーター・オトゥールの演技が秀逸。
タイトルは『ユリウス・カエサル』ですが、この巻はカエサル暗殺に始まって、オクタヴィアヌスがその後を継ぐまでの話。事実上、アントニウス&クレオパトラ VS オクタヴィアヌスの戦いがメインです。
内容の要約をしてると、そのまま史実を追うだけになってしまいますので、印象に残った塩野さんの文章の引用だけします。塩野さんの文章は、史実の描写も簡潔・明快でわかりやすい上に歴史だけに留まらない、物事の本質というか、核心を鋭く突いてくる文章が読んでてとても勉強になりますね。
ユリウス・カエサルの名を継ぐことは、1億セルティウスの金の寄贈よりも効力があったのだ。それを解ってて遺したカエサルも見事だが、18歳でしかなかったのにカエサルの真意を理解したオクタヴィアヌスも見事である。世界史上屈指の、後継者人事の傑作とさえ思う。(p109)
…(略)…優れた男は女の意のままにならず、意のままになるのはその次に位置する男でしかない…(略)…
意のままにならなくてもそれでよしとするか、または、器量才能では第一級とはいかなくても、意のままになる男を採るか。クレオパトラは、後者を選んだ。これで、彼女の以後の生き方も決まった。(p153)
カエサルは、自らの後継者と密かに決めた17歳当時のオクタヴィアヌスにアグリッパを配することで、若者に一つのことを教えていたのである。自分にある種の才能が欠けていてもそれ自体では不利ではなく、欠けている才能を代行できる者との協力体制さえ確立すればよいということを、教えたのであった。(p159)
クレオパトラは、ギリシア語・ラテン語はもちろんのことエジプトの民衆の言葉まで解したという。しかし、多くの言語を巧みに操る技能(タレント)と知性(インテリジェンス)は、必ずしもイコールではないのである。(pp179・180)全15巻、文庫にして40巻以上のこのシリーズですが、カエサル、オクタヴィアヌス、ブルートゥス、キケロ、アントニウス、クレオパトラと豪華な登場人物に恵まれた本編は、特に面白い一冊だと思います。もともとDVD『ローマン・エンパイア』のおさらいをするために読み返しているこのシリーズ。続けて、『パクス・ロマーナ[上]』を読みたいと思います。
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