ドラマ『宿命 1969-2010 -ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京-』が面白かったので、続編に当たる『血戦 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京2』を読んでみました。ドラマは上杉景勝…もとい北村一輝演ずる有川崇、彼を支える妻白井尚子、老獪な政治家白井眞一郎と、魅力的なキャラクターに恵まれ、わずか8話ながら、非常に楽しめました。見終わった後、続編にあたる小説が発売中、とのことで即購入。
個人的にはドラマ版の尚子の方が、キャラクター造形的に好きですね。『2』では、ドラマで崇が「あのお嬢さん、なかなか肝が据わってます」と賞賛した尚子の強さがあまり感じられませんでした。
この選挙戦というのが、民主党による政権交代が実現した、現実世界の2009年の衆議院選挙の流れをトレースした形で展開します。5年に渡る長期政権、後に続く2人の総理の電撃辞任、世界金融危機の発生と与党への逆風、“豪腕”で与党へのゆさぶりをかける野党幹事長・・・。これらの既視感あるできごとが、小説の中でも同じように展開します。
もちろん、我々は政権交代にいたる(いたってしまった・・・)までの一連の政局を見てきたからこそ、この小説の劇的な選挙戦にもリアリティを感じることが出来るのですが、少し現実に起きた出来事に即しすぎているのではないかな、という印象を持ちました。読んでいて、去年の政局をおさらいしているような感覚にすらとらわれてしまいます。もう少し小説オリジナルの展開があっても良かったのではないでしょうか。
あんまり現実の流れに制約を受けすぎてしまうと、今後の小説の展開も、現実の政局に左右されかねないのが心配です。実際に今は民主党政権がボロボロになっていますが、こんな状況の中で(架空の)野党新人議員・有川崇はどう動けるのでしょうか?
まぁ、ドラマの放送にあわせて急遽書き下ろしたのでしょうか、時間もあまりなかったのかもしれませんが、それだけの力が、作者にはあるように思えます。
ともあれ、プロローグ&エピローグにわずかばかり登場する宣子の存在といい、いかにも「続きます」的な終わり方です。続編が刊行されるのを楽しみにしています。
■ドラマ版との差異
ドラマの原作に当たる『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京』上・下巻は読んでいなかったので、まずは小説版とドラマ版のキャラクターの違いに目が行きました。『2』のみ読んだだけでも解る一番の違いは、有川崇と政略結婚の末に結ばれた妻・白井尚子の性格でしょう。ドラマ版では政略結婚でありながらもそれなりに愛に溢れた夫婦生活を営んでいた様ですが、『2』では崇の失脚後、完全に愛がさめてしまっています。ドラマ版の尚子の性格なら、夫が失脚し、冷や飯を食う生活が続いても、2人の間の愛は冷めず、むしろけなげに夫を支えていきそうな気がします。個人的にはドラマ版の尚子の方が、キャラクター造形的に好きですね。『2』では、ドラマで崇が「あのお嬢さん、なかなか肝が据わってます」と賞賛した尚子の強さがあまり感じられませんでした。
■現実を追う展開
ドラマでは崇が岳父・白井眞一郎に叛旗を翻すところで終わりましたが、『2』では実際に崇が政界に進出するため、眞一郎と同じ選挙区で野党の刺客として出馬し、その選挙戦がメインとなっています。この選挙戦というのが、民主党による政権交代が実現した、現実世界の2009年の衆議院選挙の流れをトレースした形で展開します。5年に渡る長期政権、後に続く2人の総理の電撃辞任、世界金融危機の発生と与党への逆風、“豪腕”で与党へのゆさぶりをかける野党幹事長・・・。これらの既視感あるできごとが、小説の中でも同じように展開します。
もちろん、我々は政権交代にいたる(いたってしまった・・・)までの一連の政局を見てきたからこそ、この小説の劇的な選挙戦にもリアリティを感じることが出来るのですが、少し現実に起きた出来事に即しすぎているのではないかな、という印象を持ちました。読んでいて、去年の政局をおさらいしているような感覚にすらとらわれてしまいます。もう少し小説オリジナルの展開があっても良かったのではないでしょうか。
あんまり現実の流れに制約を受けすぎてしまうと、今後の小説の展開も、現実の政局に左右されかねないのが心配です。実際に今は民主党政権がボロボロになっていますが、こんな状況の中で(架空の)野党新人議員・有川崇はどう動けるのでしょうか?
■なんだかもったいない・・・
物語全体にいえることなのですが、もう少し深く書き込んだり、エピソードを増やして欲しいな、と思いました。この話の魅力は登場人物のキャラクターと、人物同士の複雑な関係の展開にあると思うのですが、『2』では新しい登場人物も増え、「この人とこの人会話させたら面白そうだなー」と思うことがしばしば。ドラマ45分×8話分と比べると、これだけの話の流れがわずか250ページ、どうしても薄っぺらい印象が否めません。200ページくらい読んで、「え?もう終わり?」と思っていしまいました。この3倍のページを使って、もう少し深くじっくり書いて欲しかった。話自体はとても面白いのに、深く書き込める、という小説形式の利点が感じられません。なんだか、非常にもったいない。まぁ、ドラマの放送にあわせて急遽書き下ろしたのでしょうか、時間もあまりなかったのかもしれませんが、それだけの力が、作者にはあるように思えます。
ともあれ、プロローグ&エピローグにわずかばかり登場する宣子の存在といい、いかにも「続きます」的な終わり方です。続編が刊行されるのを楽しみにしています。
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